ユネスコで 知られる イドリヤの 繊細な レースは 細い 木製の ボビンが 何十本も 揺れて 音を 奏でる。 先生の 指先が 見落とした 目を 優しく 戻し 小さな 花弁が 台の 上で 咲く。 失敗も 模様の 一部だと 学びます。 糸の 張りを 呼吸で 整え 隣の 物語と 編み合わせます。 今日は
カーニアの 谷から 伝わる 木彫の 面は 冬の 祭りと 祖先の 記憶を 守り 続ける。 粗い ナイフ痕が 光を 受け 表情が 突然 やわらぐ。 森の 匂いが 室内に 広がり 私の 手の 震えが 物語へ と交じる。 師匠の 笑い声が 木屑の 雪を 舞い上げ 今日の 自信を 少し 増やす。
湾内の 穏やかな さざ波が 工場の 開いた 扉から 覗き 古い 設計図と 新しい ねじ回しが 同じ 台に 並ぶ。 木肋の 曲線を 蒸気で しならせ 砕ける 波より 静かな 音で 船体が 形を 取り 未来の 航路を 想像させる。 塩と オイルの 匂いが 手帳に 染みて 帰路の 相棒になる。
石灰岩の 風が 吹き抜ける カルストで 熟成庫の 木扉を 開けると 生ハムの 時間が 甘く 漂う。 テランの ルビーが 舌に きらめき 塩と 酸が 握手して 口中に 新しい 物語を つくる。 岩の 影が 皿に 現れます。 切り口の 香りが 会話を 解きほぐし 旅路の 疲れを ほどよく 忘れさせる。 今夜も
銅鍋で バターが 静かに 泡立ち ジャガイモと モンタージオが とろりと 絡む。 雪を 見た あとに すする 熱は 指先から 心まで じんわり 溶かす。 台所の 声が 祖母の 記憶を 呼び チーズの 端が こんがり 祝祭になる。 焦げの ほろ苦さが 旅先の 寝床を ふと 思い出させ 夜道を 温めて くれます。
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